2007年6月16日土曜日

矢臼別演習場の本格調査 イトウ産卵床31カ所 砂防ダムの影響懸念

 【別海】陸上自衛隊矢臼別演習場(根室管内別海町など)内の風蓮川水系にこの四月、イトウの産卵床が三十一あったことが、道立水産ふ化場の川村洋司主任研究員(57)の二日までの調査で分かった。演習場内の同水系の本格調査は初めて。農地開発を免れた自然の豊かさが立証された形だが、演習場内では砂防ダムが次々と造られており今後、急速な環境悪化も懸念される。
 調査は昨年、北大大学院生の野本和宏さん(27)が、演習場内の三カ所で産卵床と稚魚を初確認したことを受けて実施。四月以降、札幌防衛施設局が川村研究員とともに調査を進めている。
 三十一カ所のうち、二十七カ所は魚道が設けられている砂防ダムのある川で見つかった。他の四カ所は、魚道がなかったり、あっても不便なダムの川にあった。
 イトウは淡水魚だが、サケ科。親魚は産卵の際、川を遡上(そじょう)し、上流の直径三センチ前後の小石のある川床に産卵する。ダムがあると、川を上り下りできず産卵の阻害要因となる。
 調査の中で、川村研究員は、産卵に適した川床も点検。もしダムがなく自由に移動できれば、約百カ所で産卵できたはずとの試算も出した。
 釧根地方はかつてイトウが数多くいたが、現在は風蓮川や別寒辺牛川、釧路川などに数百匹生息する程度。農地開発で森林を伐採し、土砂が川を汚染したためとされる。演習場はほとんどが森林だが、防衛予算がつくため汚染防止の砂防ダムが十五基あり、さらに増やす計画だ。
 川村研究員は「演習場内には産卵適地がたくさんある。ダムに魚道を設けても将来、土砂が堆積(たいせき)すると利用しづらくなる。ダムがなければサクラマスなど他の魚の産卵も増えるはず」と指摘している。

(北海道新聞より引用)

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